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糖尿病内科コラム
血糖値と食事
血糖値が高いと糖尿病や動脈硬化などの病気を引き起こす可能性があります。血糖値には食生活が大きく影響しています。血糖値をおさえるための食事内容や食事のとり方についてお話いたします。
食事の内容
食事に含まれる栄養素のうち、「炭水化物」「たんぱく質」「脂質」が血糖値に影響を与えます。炭水化物は食事開始後早期の段階から血糖値を上昇させ、2時間以内に血糖値に反映されます。たんぱく質は食後3~5時間、脂質は4~10時間で血糖値に反映されます。また、炭水化物は2時間以内に全て消化、吸収される一方で、脂質は消化、吸収に時間がかかるため長時間にわたり血糖値に影響があります。

炭水化物を減らせば血糖値は下がると思われがちです。これまで、炭水化物の摂取量と血糖値の関係に関する研究は多く発表されています。低炭水化物食により体重や血糖値が低下したとする結果は、炭水化物を減らした効果というよりも、総エネルギー摂取量が減ったことによると考えられています。炭水化物摂取量と血糖コントロールや合併症との関係は一致した見解がありません。炭水化物を極端に減らすことは長期的な安全性などが証明されていません。また、食事の主食を減らすとかえっておかず量が過剰になったり、小腹がすいて間食が増えてしまうことにつながりかねません。主食を、食物繊維の多い玄米や雑穀米、全粒粉パンなどを選ぶと、食後の血糖値が上昇しにくくなります。
果物に含まれる果糖は食後血糖が上昇しにくいですが、過剰摂取は血糖のみならず、中性脂肪や体重の増加をきたす心配があります。果物は1日80kcalまでとされ、みかん中2個、リンゴ中1/2個などの目安されるとよいでしょう。
食事のとり方
1. 食べる順番
食物繊維を多く含む野菜やたんぱく質を米飯より先に食べると食後血糖値が抑えられます。野菜に含まれる食物繊維が糖質の分解、吸収を遅らせ、食後血糖の上昇を抑えると考えられています。たんぱく質は先に食べると胃の運動が抑えられることで食後の血糖値を抑えることがわかっています。
2. 食べる速さ
食事をして血糖値が上昇すると、脳の満腹中枢が刺激され満腹であることを体に伝えます。満腹中枢が血糖上昇を感知するまでに約15分かかるといわれており、早食いでは満腹を感じる前に食べ進めてしまいます。根菜類やきのこ、こんにゃく、海藻類など食物繊維が豊富で歯ごたえのあるものを積極的に取り入れましょう。
3. 食べる時刻
食事の回数は1日3回が基本です。朝食を抜くと、昼食後および夕食後の血糖値が上昇することがわかっています。 また、遅い時間帯の夕食は体重が増え、血糖値が上がりやすいことがわかっています。夕食が遅いと、空腹のために食事量が増えてしまうこともあります。早めの時間に少量食事をとり(サラダとおにぎり、野菜サンドイッチなど)、帰宅後の食事も軽めにするといった分食は一つの方法です。
アルコール
アルコール摂取と血糖コントロールはUカーブ現象を示す事がわかっています。日本人では25g/日まで(ビール500mL, 日本酒1合程度)が適当と考えられています。ただし、アルコール量だけでなく、アルコール飲料に含まれる炭水化物のエネルギーに注意が必要です。また、アルコールは急性効果として低血糖をきたすため、インスリン治療中の方は注意しましょう。
食事療法は生涯にわたって継続して続けていかなければなりません。それぞれの生活パターンや食事の好みに合わせつつ、上手にコントロールしていきましょう。
2025年4月から、月・水 診療開始!
糖尿病内科 大屋 純子
日本糖尿病学会糖尿病専門医・指導医
日本病態栄養学会病態栄養専門医
日本日本内科学会総合内科専門医