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貧血のおはなし

お子さんの「貧血(ひんけつ)」について少しお話ししたいと思います。

「貧血」と「立ちくらみ」

子どもの貧血

 学校の朝礼などで「貧血になって倒れた」という話を聞いたことはありませんか?今日のお話はその「貧血」についてではありません。学校の朝礼などで倒れる貧血はいわゆる「脳貧血」「立ちくらみ」というもので、一過性に脳の血流が少なくなることによっておこるのですが、今日お話しする「貧血」とはまったく別のものです。

「貧血」と「赤血球」

 貧血の話をする前にまず、血液の話をしなければなりません。ひとの血液の中には「白血球」 「赤血球」「血小板」が流れていて、それぞれ働きをもっています。赤血球はからだのすみずみまで酸素を運ぶ役目をしています。「貧血」は「赤血球」の数が減ったり、「赤血球」の働きが弱ったりする状態のことを言います。

「鉄欠乏性貧血」とは?

 貧血の原因はいろいろありますが、外来でよく見かける貧血は「鉄欠乏性貧血」です。 赤血球の中には「鉄」が含まれており、鉄に酸素がくっついて運ばれるのですが、その鉄が少なくなると酸素を運ぶ力が弱くなり「疲れやすい」「息切れ」「ふきげん」「頭痛」「動悸」「めまい」「顔色が白い」などの症状が出ます。鉄は乳幼児期の発達にも重要な役割をはたしていることがわかっていて、鉄が不足すると泣き入りひきつけをおこしやすいとも言われています。

 ゆっくり進行した場合は症状が出にくいことや、もともと顔色が白っぽい人もいるので、症状だけで見つからないこともあり、学校検診ではじめて見つかる場合もあります。

 鉄欠乏性貧血は米国の統計では1~2歳児の9%、3~5歳児の3%にみられ、日本でも6ヶ月児の5%、18ヶ月児の3%に貧血を認めたという報告があります。

どんな子がなりやすいの?

 鉄欠乏貧血は乳児期後期~幼児期初期と思春期(特に女児)におこりやすいと言われています。 乳児期はからだがどんどん大きくなり血液もたくさんつくらなければなりません。そのため鉄もたくさん 必要になります。赤ちゃんはふつう、お母さんのおなかの中にいる時にお母さんから鉄をもらうのですが、お母さんが鉄不足だったり、早産の場合などは鉄が十分もらえず、鉄欠乏性貧血になりやすいと言われています。また、生後5~6ヶ月頃になると、お母さんからもらった鉄を使ってしまい、離乳食などからとる必要が出てきますが、離乳食がうまく進まない場合は鉄欠乏性貧血になることがあります。

 思春期では著しいからだの発育のほか、過度のスポーツやダイエットなどが鉄欠乏性貧血の原因となります。また、特に女の子は月経による出血で鉄が失われるため鉄欠乏性貧血になりやすいと言われています。

牛乳を飲んで「貧血」?

 乳幼児で多量の牛乳を飲んでいる子は鉄欠乏性貧血を起こすことがあります。牛乳は鉄の含有量が少なく、乳幼児が牛乳をたくさん飲みすぎるとおなかがいっぱいになって他のものを食べなくなったり、たんぱくろう出性胃腸症をひきおこして鉄の吸収をさまたげたりすることがありますので、注意が必要です。
 もちろん牛乳は他にいろいろな栄養素を含んでいるので、1歳以上での適量の摂取はからだによいとされています。

「鉄欠乏性貧血」にならないために

 鉄は食材からとる必要があるため偏食に注意する必要があります。鉄を多く含む食品としては赤身のお肉やレバー、海草などがあります。また、ビタミンCは鉄の吸収をよくするので、離乳食ではレバーペーストなどとともに果汁もとるとよいでしょう。ほうれん草や小松菜は鉄の含有量は高いのですが吸収が悪いので、それだけでは十分とは言えません。ミルクを普通ミルクからフォローアップミルクにすると鉄分は約2割増しになりますが、離乳食がしっかり食べられていれば、あえてフォローアップミルクにする必要はありません。
 重度の鉄欠乏性貧血の場合は鉄剤(お薬)を飲む必要がある場合があります。治療は数か月と比較的長期間におよぶことがあります。

最後に

 からだに必要なのは鉄だけではありませんので、栄養のバランスに気をつけて食事をとりましょう。 特に離乳の時期はいろいろ不安も多いと思いますが、ご心配があればご相談ください。一緒に考えていきましょう。

2025年4月11日
小児科 髙嶋 能文
日本小児科学会小児科専門医
日本血液学会血液専門医

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